大判例

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鳥取地方裁判所 昭和24年(ワ)185号 判決

原告 中村善一

被告 水原和美

一、主  文

被告は原告に対し五号金庫壱個及びその附属鍵壱個の引渡しをせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

此の判決は原告に於て金参千円の担保を供するときは仮に執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決並に担保を條件とする仮執行の宣言を求め、其の請求の原因として原告は昭和二十四年三月中旬鳥取税務署の公賣処分により鳥取縣薬品配給株式会社所有の五号金庫一個及びその從物である附属鍵一個を買受けてその所有権を取得した。然るに被告は右金庫及び鍵を何等の権原なくして占有しているのでその引渡しを求めるため本訴に及んだと述べた。<立証省略>

被告は原告の請求を棄却する訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め答弁として原告主張事実中原告がその主張の時にその主張の通り本件金庫及びその附属鍵を買受けその所有権を取得した事実及び該金庫及び鍵を被告が占有している事実はこれを認めるがその余の事実は否認すると述べ抗弁として(一)被告は右金庫及びその附属鍵各一個を昭和二十四年四月二十二日原告よりその代理人である訴外福井清勝を介し代金一万円をもつて買受けその所有権を取得したものである。(二)仮に右福井に代理権なしとするも原告が同人に本件金庫の鍵及び暗号を引渡したことは該金庫の処分につき同人に代理権を與えた旨を第三者に対し表示したもので同人は右鍵及び暗号を示し原告の代理人であると称して被告と本件金庫の賣買をなしたものであるから原告は該賣買につき責任を負うべきで被告は原告に対し右賣買の効果を主張し得る。(三)又仮に然らずとするも被告は本件金庫及鍵を前記福井より買受け同人よりその引渡しを受けて平穏且公然にその占有を始め且当時被告は善意無過失であつたから即時に該金庫及鍵の所有権を取得したもので以上何れにするも本件各物件は被告の所有に帰し同時に原告の所有権は消滅したからその所有権に基く本訴請求は失当であると述べた。<立証省略>

三、理  由

原告が昭和二十四年三月中旬鳥取税務署の公賣処分により鳥取縣薬品配給株式会社所有の五号金庫一個及びその附属鍵一個を買受け、その所有権を取得した事実及び被告が現に右各物件を占有している事実は当事者間に爭いがない。被告は同年四月二十二日原告の代理人福井清勝と右金庫及鍵の賣買をなしその所有権を取得した旨抗爭するにつき按ずるに被告の全立証を以てするも原告が前記福井に対し本件金庫及び鍵の賣買に関し代理権を授與した事実を認めることができず却つて証人川口義治の証言により成立の眞正を認め得る甲第一号証及び同証人の証言を綜合すればその代理権を與えた事実がないことを認めることができるからこの抗弁は採用し難い。次で被告は原告が前示福井に本件金庫の鍵及び暗号を引渡したことは該金庫の処分につき同人に代理権を與えた旨を第三者に対し表示したもので同人が原告の代理人と称して行つた被告との本件金庫の賣買について原告はその責に任ずべき旨主張するが金庫の鍵及び暗号を引渡した事実のみをもつて直ちに第三者に対し右金庫及び鍵の賣買に関する代理権を與えた旨の表示をなしたものと認めることはできないから、原告と右福井との間に被告主張のような鍵及び暗号の授受があつたか否かを明かにするまでもなく此の点についての被告の抗弁もこれを採用し得ない。次に被告の即時取得の抗弁につき按ずるに証人福田勝一の証言によれば被告が右各物件を買受けるにあたり福井清勝の所有に属すると誤認した事実を窺えないこともないが右各物件が福井の所有でないことを知らなかつたこと即ち善意であつたことにつき過失がなかつた事実については被告の提出援用にかゝる全資料によるもこれを認め難いばかりか却つて前顯川口証人、福田証人の証言を綜合すれば原告は右各物件を公賣により買得するや昭和二十四年四月上旬川口義治をして鳥取市元魚町三丁目にある鳥取縣薬品配給株式会社営業所に引取りに赴かせたところ右営業所を自己の住居としている被告は引渡を拒んだので川口はやむなくその際運搬用具として持参した荷車、ロープ、金棒をそのまゝ被告方に預けて立去つたが同月二十二日被告は未だ右運搬用具を自ら保管している間に福井との間に右金庫及び鍵につき賣買契約を締結し、しかも右の様な事情の下においては右金庫及び鍵の所有関係につき一應原告に問合せを爲す等の調査をすべきであるのにその際その調査を怠つた事実を認めるに十分で右事実によれば被告は善意であることにつき過失があつたというべきであるからこの点に関する被告の抗弁も亦採用し難い。果して然らば被告に対し所有権にもとずき該金庫一個及びその附属鍵一個の引渡しを求める原告の本訴請求は正当であるからこれを認容し訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九條仮執行の宣言につき同法第百九十六條第一項を適用して主文の通り判決した。

(裁判官 柚木淳)

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